更年期の女性の方の口腔ケアで気をつけたいドライマウス
2020/04/08
更年期の女性の方は,特有の歯肉炎が起こったり歯周病が悪化したりと、口の中にもトラブルが起こりやすくなります。
また、『ドライマウス(口腔乾燥症)』が起こると、単に口が乾いて不快感があるだけではなく、唾液不足から様々なトラブルを招きやすくなります。
ドライマウスの原因は、ストレスなどで唾液の分泌量が減ることですが、全身にかかわる病気が隠れている場合もあります。
「更年期」にはどういう症状が
閉経の前後約10年を更年期と呼びます。
日本人女性の閉経は平均で50.5歳と言われており、「1年以上月経がない場合」に閉経と診断されます。平均年齢から考えると、40〜60歳ぐらいの方に更年期の症状が現れる可能性があります。
女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の分泌は20〜30代でピークを迎えますが、その後急激に減少することで、さまざまな身体的・精神的症状が出てくるのが「更年期障害」です。
女性の閉経前における身体的症状としては、のぼせや顔の火照り、脈が速くなる。
動悸や息切れ、異常な発汗、血圧が上下する、耳鳴り、頭痛やめまいなどです。
精神的な症状としては、興奮亢進、イライラや不安感、うつ、不眠などです。
閉経後はこれらに加えて、膀胱炎や尿失禁、腰や膝の関節痛、目やのどなどの粘膜の異常などの身体的症状と無気力感などが精神的症状として現れてきます。
男性は機能不全(ED)、女性は生理不順も症状としてみられます。
更年期の方はドライマウスになりやすいので注意が必要
健康な成人では通常、1日に約1.5ℓの唾液を分泌し、口の中を潤わせています。そのほか唾液は歯を修復する、病原微生物の増殖(虫歯や歯周病)を防ぐ、口の中の粘膜を保護する消化を助ける、味覚を助ける、発音を滑らかにする、傷を治すといった働きをしています。
そのため、ドライマウスで唾液の分泌量が減ると、様々なトラブルに見舞われやすくなります。
次の症状に当てはまる数が多いほど、ドライマウスの可能性が高くなります。
- ドライマウスが疑われる症状
- 〇口の中やくちびるが乾く
- 〇のどが渇く、水をよく飲む
- 〇口の中がネバつく
- 〇口の中や舌が痛い、ヒリヒリする
- 〇皮膚が乾燥しがち
- 〇乾いたもの、パサパサしたものが飲み込みにくい
- 〇口臭がする
- 〇味がよくわからない
- 〇口の周りが荒れやすい
- 〇目が乾く
- 〇消化不良になりやすい
ストレス・口呼吸・咀しゃく筋の筋力低下、薬の副作用など
ドライマウスの原因としてよく知られているのは過度なストレスです。
ストレスによって、自律神経のうち交感神経の働きが活発になると、唾液の分泌量が減ってしまいます。もう一つは口呼吸です。口呼吸で唾液が蒸発しやすくなって、口の中が乾いてしまうのです。口呼吸の主な原因は鼻炎などによる鼻づまりやかみ合わせの悪さなど。いびきをかく人は、眠っている間も口呼吸をしていることが多く、この場合唾液の蒸発がさらに進みます。
そのほか、加齢や柔らかいものばかり食べる習慣などで、口のまわりにある咀しゃく筋の力が低下すると、これが唾液の分泌量の低下につながる場合があります。
喫煙も口の中を乾きやすくします。また、薬の副作用によって唾液の分泌量が低下することもあります。
ストレスによる抑うつ治療のために薬を飲んだ高齢者の場合、複数の要因が重なってドライマウスを招きやすくなる恐れがあります。
また、糖尿病が進行すると、唾液の分泌量が低下していなくても、脱水によってよく口が乾き、水を飲みたくなります。更年期障害の症状の一つとしてドライマウスが起こることもあります。
ドライマウスのケア用品を使い、ストレス解消、口をよく動かし、加湿も…
ドライマウスが気になる場合、歯科医師に相談して適切な治療を受けることのほか、市販されているドライマウスのケア用品を使う方法もあります。唾液の蒸発を防ぐマスク、口の中の潤いを保つスプレーやジェル、保湿剤を含むマウスウォッシュなどが市販されていますので、歯科医師・薬剤師によく相談して使いましょう。
また、生活習慣を改めるセルフケアも大切です。タバコはやめてストレス解消を図り歯科医師らのアドバイスをもらって口呼吸を改めましょう。
食べ物も柔らかいものばかりではなく、硬めの食材も取り入れ、よく噛む習慣で咀しゃく筋を刺激し、唾液腺の働きを促すことを意識しましょう。人とよく話をする習慣は口の周りをよく動かして咀しゃく筋を刺激するうえ、ストレス解消にもなります。
特に乾燥しやすい冬季には、加湿器などで適度な湿度を確保するようにしてください。
薬の副作用も可能性がある場合は、ドライマウスが起こりにくい薬剤への変更などを医師と相談することをお勧めします。
ドライマウスをしっかり防ぎ、発症が疑われる場合は早めにセルフケアを始め、場合によっては治療を受けることが大切です。