妊娠中に歯が弱くなる?本当?
2020/06/12
女性は妊娠すると身体に様々な変化が起こります。
それは身体に限らず口腔内も同様です。では、なぜ妊娠すると歯が弱くなるのでしょうか?
今回は、歯が弱くなる理由と対処方法についてまとめてみました。
歯が弱くなる理由
妊娠すると歯が弱くなると云われていますが、その理由でよく聞くのが、『赤ちゃんにカルシウムをとられる』というお話です。
妊娠した女性はカルシウム不足に陥りやすいですが、歯が弱くなる理由はそれとは違います。
妊娠するとまず唾液が酸性側に傾くことが一つに挙げられます。酸性は虫歯菌が好む環境であり、言ってみれば口腔内が虫歯菌好みの環境に変化するのです。
また、つわりによる衛生上の問題も虫歯になりやすい要因になります。つわりの程度には個人差がありますが、酷い人になると歯磨するだけで気持ち悪くなってしまいます。
このため、通常の状態に比べると口腔内の清潔を維持しにくくなるのです。さらに、食生活が変化することで飲食の回数が増えるため、それも虫歯の要因になるのです。
歯磨きを工夫する
本来なら食事の後に歯磨きするのが理想ですが、体調次第でそうもいかない事があると思います。とはいえ、まったく歯磨きしないうようでは確実に虫歯や歯周病を招いてしまいます。
ここは、食後にこだわらずに体調のいい時間帯に歯磨きする意識をもってください。毎日お風呂の時間や寝る前など、身体がリラックスできる時に歯磨きするなど。
また、歯磨きの仕方を工夫することでも幾分か楽にできます。喉の奥に近づくほど吐き気を感じるため歯ブラシを奥に向けて磨くのではなく、奥から手前にかきだす感じで磨くとやりやすくなります。
さらに、妊娠して臭いに敏感になっているなら、香りの少ない歯磨き粉を唾液が喉に流れないように下を向いて磨くことでも、吐き気を抑える効果があります。
女性ホルモンと歯周病
妊娠中は女性ホルモンの分泌が活発になり、これに細菌が影響を受けることがあります。
細菌の中には女性ホルモンを栄養源にしているものがあるため、女性ホルモンの分泌が活発になることでそれらの細菌が増殖してしまうのです。さらに、唾液も影響して口腔内が不潔になりやすく、その影響で歯肉が腫れることがあります。
この状態を『妊娠性歯周炎』とよび、治療しないと歯周病になってしまうのです。
こうした事態を防ぐためにも、妊娠中の女性には歯科医院で定期健診を受けることをおすすめしております。
妊娠しているからといって治療できないことはないですし、定期健診は虫歯や歯周病の予防はもちろん、これが引き起こされた時の早期発見と早期治療のためでもあります。
歯周病の胎児への影響
妊娠中に特に注意が必要なのが歯周病です。
これは自身のためだけではく、お腹にいる赤ちゃんのためでもあるのです。実は、妊娠中に歯周病になるとお腹の赤ちゃんに悪影響を及ぼす事実が報告されています。
具体的には、妊婦の歯周病は早産や低体重児を出産するリスクが7倍以上高まると言われています。
このデータは1990年代後半にアメリカの研究報告で発表されたものであり、『歯周病は早産の危険因子の一つ』とまで言われているのです。
因みに、喫煙やアルコールなども早産の要因として一般的ですが、歯周病はそれら以上に高い確率で早産を招くとされています。
妊娠中の歯科治療
妊娠中に特に注意が必要なのが歯周病です。
妊娠しているからといって歯科治療ができないわけではありません。
しかし、時期によっては治療がつらく感じられる事も事実です。
妊娠中でも問題なく歯科治療ができる時期について説明します。
妊娠5ヶ月から8ヶ月目の中期の段階であれば、ほとんどの人が問題なく治療を受けられます。
ただし、妊娠初期では応急処置のみになることが多く、これは緊張で流産してしまうのを防ぐためです。もし可能であれば、妊娠初期では治療を避けた方がいいでしょう。
また、長時間の治療や薬の投与はお勧めできないため、ホワイトニングなどの審美治療は妊娠中だと受けられないことがあります。
まとめ
1:歯が弱くなる理由
唾液が酸性側に傾くので虫歯になりやすい。つわりで口腔内が不潔になりやすい。
2:歯磨を工夫する
歯ブラシの動かし方や首の向き、歯磨きするタイミングを工夫して磨くと良い。
3:女性ホルモンと歯周病
妊娠中は女性ホルモンの影響で歯周病になりやすい。
4:歯周病の胎児への影響
妊婦が歯周病になると、早産や低体重児出産のリスクが7倍以上高まる
5:妊娠中の歯科治療
妊娠中でも歯科治療は可能だが、妊娠初期はお勧めできない。
これら5つのことから、妊娠すると歯が弱くなるのか、どうすればいいのかがわかります。
『歯が弱くなる』というよりは、『口腔内が不衛生になりやすい』といった方が的確かもしれません。
唾液や女性ホルモンに起こる変化によって、虫歯や歯周病になりやすい体質になってしまうのです。
しかし、定期検診を受けるなどのケアを徹底していれば、予防することは充分可能です。
聞いてみたい、確認したい等ございましたら、お気軽にご連絡ください。