お口の中を整えるのもがん治療の一部です。
日本の平均寿命は世界のトップクラスで大変喜ばしく、また誇らしく思います。これからも健康で元気にお過ごし頂きたいと願っております。当院も皆様の健康維持・増進のお手伝いを担って参ります。
さて、口周りの健康と全身の状態との関係には科学的な裏付けがなされています。ちょっとした滑舌の悪さや食べこぼし、飲み物にむせるといった口周りのトラブルは、高齢者の体が弱っていく最も早いサインで、オーラル・フレイル(口腔機能の低下)と呼び、虚弱を予防する為の早い段階での対処が望まれます。
お口の不調を放置すると咬むことが不自由になり、食べるものが制限され、しいては食欲の低下へと繋がります。食欲の低下は必要な栄養素の不足を招き低栄養になり、筋力・筋肉量の低下を引き起こします。その事により体を動かすことが不自由となり、要介護の状態へと進んでしまいます。
お口の健康を保ち、よく噛むことが出来るようにすることがこれからも元気で過ごして頂くための秘訣です。どうぞお口の健康に十分にお気をつけください。定期的に健診とメンテナンスを受けられることをお勧めします。もし不具合がある時には早めにご連絡をください。また、ご自身で当院へ通院が困難な方には訪問歯科診療も行っております。
体の病気を治すのに、どうしてお口のケアが必要なの? |
お口の中には多くの細菌が生息しています。普段は悪さをしない細菌も、手術や抗がん剤治療、あるいは放射線治療を行うことで一時的に全身の抵抗力が弱まったとき、肺炎や重症の口内炎などの様々な合併症の原因となって、手術後の治りが悪くなることがあります。
しかし、体の治療を始める前に、あらかじめお口のケアを行い、細菌数をできるだけ少なくすることで、合併症のリスクを減らすことができます。
お口のケアってどんなことをするの? |
お口の中の細菌は、その大多数が、歯の周りの汚れ(歯垢や歯石)の中に潜んでいます。お口のケアでは、専用の道具を使って歯の周りの汚れを除去するとともにセルフケア方法についてアドバイスします。
また、むし歯があれば応急処置をして、口の中をできるだけ健康な状態に保つようにします。他にも全身麻酔の際、歯が傷ついたりすることを防ぐために、保護用マウスピースを作ることも重要なケアのひとつです。
その結果、早く自分のお口で食事をとることができ、早期の回復が期待できるようになります。
下の図は、がん患者さんに対して手術前と手術後にお口のケアを行った場合、行わなかった方と比較して、入院日数が短縮したことを示しています。
下の図は、がん患者さんを対象に、手術前にお口のケアを行った方と行わなかった方とを比較した結果、行った方は術後合併症が約1/4に減少したことを示しています。