よく噛んで体も歯も健康に!
2018/11/08
「食」は良く噛んで食べることが重要
現在、国が推進している事柄のひとつに「食育」があります。食育の中心は食事の内容です。各種の栄養のバランスがとれた食事を摂取することが勧められています。
日本には、玄米菜食を基本にした食養生法もあります。和風の食事が健康にいいことは現在、世界的に認められています。しかし、主食は白米より玄米がよいとわかっていても、玄米が好きになれない人もいるでしょう。加えて、仕事を持ち、社会で活躍していると、外食の機会がふえ、思いどおりにいかないことが多いはずです。
食事の内容より噛むことが大事
さまざまな面で難しさがありますが、私は食育ということでは、何を食べるかということ以前に、よく噛んで食べることが大事と考えています。それは健康のために非常に重要ですが、現代人の大半はよく噛まないで食べることが習慣になっています。
現代では、一口当たりの噛む回数の平均は10回程度などといわれてますが、実際はもっと少ないのではないでしょうか。一食当たりの噛む回数は平均で620回です。江戸時代は1500回、戦前は約1400回ですから、戦後に減ってきたことは明らかです。
噛むことには、さまざまな効用があります。まず、唾液の分泌を促します。唾液には消化酵素が含まれているので、よく噛んで食べるほど、消化にいいわけです。食べたものに含まれる栄養素が、体に十分に取り込まれ利用されます。
唾液には殺菌作用がある成分も含まれているので、口腔内の衛生にも役立ちます。よく噛んで食べないと、唾液が十分に分泌されないため、虫歯や歯周病になりやすくなります。
また、噛むことは、顎の骨の形成にもかかわり、よく噛むことによって顎が十分に形成されます。顎がきちんと発育しないと、歯列が正常になりません。顎が小さい人に歯並びが悪いケースが多いことは、実際によく知られています。
さらには、よく噛むことは脳に作用し、脳の血流も促進します。よく噛まないことは、認知症になりやすいこともわかっています。残っている歯の数の減少とともに、脳も萎縮し、脳の機能が低下することが報告されています。
噛むとおいしい食品、料理を
よく噛まないことは早食いに通じます。早食いは食後の血糖値が急に上昇しやすく、糖尿病になるリスクも高まります。満腹感が得られにくいので、食べ過ぎて肥満になるおそれもあります。
なぜ、よく噛まなくなったのでしょうか。その理由の一つは、フライドポテト、マッシュポテト、ハンバーグ、ハンバーガー、麺類、カレーライス、焼きそば、餃子、卵かけごはんなど、軟らかい食べ物が氾濫しているからです。
早食い、丸呑み、つまり、あまり噛まなくても飲み込めるような食品や料理が多食されています。カレーライスなどは、食べるというより、飲み込むという表現が適切な摂取の仕方の人もいます。
これらの食品や料理をよく噛んで食べるようにいっても、それは無理というもの。なぜなら口に入れただけでおいしいし、よく噛むと味は失われてしまうからです。
結局、よく噛むためには、噛みごたえがあり、噛むほどおいしい食材や料理をできるだけ食べるようにするしかありません。
食品(料理)と噛む回数には明白な相関があります。噛むと味が出る食材には、玄米やキノコ類、海藻類、根菜類、切り干し大根、高野豆腐などの乾物、みりん干などの乾物、イカ、タコ、貝類、ナッツなどの堅果類などがあります。そういう食品を選ぶことが大事です。
そして、左右の顎(奥歯)を均等に使って噛むように心がけることも大事です。多くの人が、どちらか一方で主に噛む癖がありますが、片側噛みは顔をゆがませ、歯並びを悪くする要因になります。
よく噛むことの重要性を認識し、まずは一口15回を目標に、よく噛んで食べるようにしましょう。