最近の研究から、第一印象は口元の印象が大きな要因で決まる事がわかってきました。そこで、もっと美しくありたい、第一印象を良くしたいという希望から矯正治療を始められる方が増えています。
矯正治療は歯並びや咬み合わせが悪い場合、矯正装置を装着して歯の位置を移動させ、歯並びと口元の審美性を改善し、よく咬めるようにする治療のことをいいます。そこでまず、歯並びや咬み合わせが悪いことは具体的にどのような障害を起こしているか説明します。
① 審美障害
悪い歯並びやしまりのない口元はイメージダウンにつながり、第一印象を悪くします。
② 咀嚼障害
食べ物をよく咬むことができない。
③ 発音障害
歯と舌の動きは発音に大きな役割を果たしているので、発音がはっきりできなくなる。
④ 虫歯
食べカスが停滞しやすく、歯みがきが十分にできないため虫歯になりやすい。
⑤ 歯周病
歯磨きが十分にできないだけでなく、歯垢や歯石が停滞しやすく歯周病になりやすい。また咬み合せが悪いと歯に無理な負担をかけ歯周病悪化の誘因となる。
⑥ 顎関節症
咬み合せが悪いと正常な顎運動が障害され、下顎のずれがおきて顎関節症の原因になりやすい。
⑦ 外傷
突出した歯があると、転んだ時に歯を折ったり、抜けるなどの外傷を受けやすい。また口唇の打撲により粘膜に傷がつきやすい。
⑧ 非社交性
口元が悪いことの劣等感により内向的になってしまう。
このような障害を取り除くために矯正治療が行われます。
一般的には、ファッション以外のおしゃれの一つとして歯並びをきれいにして美しくなりたいという審美的要望のために治療を開始される方が多いと感じています。審美性を改善することにより、心理的なコンプレックスを取り除き、第一印象を良くし、対人関係でも仕事の面でも自信に満ちた楽しい人生を過ごすことができることは、矯正治療を行う大きなメリットの一つとして評価されるものと考えます。
しかしながら、私はもっと機能的問題(顎関節や筋肉が適切に動き、よく咬むことができること)の解決、虫歯や歯周病、外傷の予防の為にこそ矯正治療は行われるべきであると強調したいと思います。
一般歯科診療(虫歯や歯周病の治療など)を行いながら矯正治療も行っていると、もし早い時期に矯正治療が行われていたらこのように歯周病や虫歯が悪化しなかったのではないかと思われる例はたくさんあります。今回はその中から二例を紹介したいと思います。